「脳波」という言葉はみなさん聞いたことがあるでしょう。
癒やされているときにはアルファ波が出ている……とか、よく言いますね。
脳のことですから、もちろん勉強とも深いつながりがあると言えます。
今回は脳波と勉強の関係について詳しく見ていきます。
目次
脳波の種類
脳波は、周波数の低い順から次の5つに分類できます。
- デルタ波
- シータ波
- アルファ波
- ベータ波
- ガンマ波
デルタ波
デルタ波は周波数が0.5〜4Hzの状態を指します。
この時、人間はどうなっているかと言うと……無意識です。
深く眠っているか、意識を失っているかのどちらかということになります。
周波数、というのは言い換えれば振動数です。それが低いということは脳の活動が遅いということですから、それが最も低い分類であるデルタ波は無意識状態である、というのは考えてみれば当たり前の話ではあります。
ではちなみに、周波数が0Hzの時はどういう状態か……というと、これはつまり脳死です。
シータ波
シータ波は周波数が4〜8Hzの状態です。
これは深く瞑想しているか、まどろんでいる状態です。
しかし一方で、シータ波が出ている時には海馬が活性化されるというのです。
海馬とは脳の中でも記憶を司る部位です。
つまり、シータ波が出ていると人間の記憶力は向上していると考えられています。
加えて、ひらめく力や洞察力、集中力も増していると言われています。
アルファ波
アルファ波は周波数が8〜12Hzの状態です。
これはリラックスしているときに出ている脳波です。
癒やし効果がある、などと言われるのはそのためですね。
しかし、ただリラックスしているだけではなく、集中力も高まっている状態です。
ベータ波
ベータ波は周波数が12〜30Hzの状態です。
これは日常において最もよく出ている脳波です。
通常の覚醒時において出ているのがこのベータ波です。特に注意や警戒、心配などをしている時に発生しています。
心身に緊張を強いることにもなるため、ストレスや肩こりなどの原因であるという考えもあり、なるべく避けるべきともされます。
とは言え、日常生活を送るためには必要なものでもありますから、過度に発生することを避け、適度なバランスを保つことが必要であるようです。
例えば、計算をするときなど瞬間的な思考を行う時にベータ波は優位になるようです。確かに、先述のアルファ波が集中を促すと言っても、計算問題を解いたりという状況にはあまりなじまないように思われますし、かと言って計算問題を解いてベータ波が優位になっているような状況が長時間続いたりすると、まさに肩が凝りそうですしストレスでしょう。
ガンマ波
最後はこのガンマ波です。周波数は30〜50Hzです。
実はこのガンマ波は最近まであまり良く知られておらず、ベータ波の一種として考えられていました。また、脳波計で計測することも難しいのだそうです。
ガンマ波は、先述のシータ波が基本波となってほぼセットで発生します。
そして、ワーキングメモリなどの脳の高次機能と深く関わりのある脳波とされています。
また、幸福を感じている時にガンマ波の検出はピークを迎えているようです。
「天然の抗うつ剤」なんて称されることもあります。良いことずくめですね。
勉強に活用できる脳波
さて、ご説明した5つの脳波の中で勉強に活用できそうな脳波は、シータ波、アルファ波、ガンマ波と言えるでしょう。
この3つの脳波について、出やすい状況と勉強への活用の方法をそれぞれご紹介します。
シータ波
海馬を活性化させ、記憶力の向上のみならず、ひらめきや洞察力も高めることができるシータ波。
このシータ波をうまく活用できれば、勉強においても非常に大きな利益となるでしょう。
エジソンもこれを知ってか知らずか自身の発明に役立てようとしたようで、片手に鉄球を持った状態でうたた寝を始め、眠りに入ってしまって鉄球が手からこぼれ落ちた瞬間にその音で目を覚まし、即座にアイデアを書き留めたのだそうです。
とは言え、普通はまどろんでいたり瞑想している時に勉強したりすることはできませんから、覚醒時にシータ波が出るような状況をうまく作り出し、コントロールする必要があります。
シータ波のコントロール方法
シータ波は覚醒時では、なにかに没頭していたり、新たなことに興味を持ったり、高揚感を味わったりしているときなどに出ています。
また、子供の脳はシータ波が優位となっているようで、これが子供の学習能力や記憶力が高い理由の一つだったのです。
そのため、勉強に没頭し集中できる環境を作ることや、勉強内容に興味を持つこと 、高揚感を持って勉強に取り組むこと、などがシータ波の学習への活用法となります。
ちなみにお風呂に入っているときもシータ波が活発に発生しています。
このことを利用した「お風呂勉強法」というものもありますので、よろしければご参照ください。
アルファ波
心身をリラックスさせ、更には高い集中力ももたらすアルファ波。
ストレスなく、勉強に集中することができれば成果も大きいでしょう。
アルファ波の中でも比較的周波数の高い脳波の時に、特に集中力が増しているようです。
アルファ波のコントロール方法
クラシックなどの音楽や自然音などのヒーリング効果のある音を聞くことでアルファ波の発生を促して、リラックスしてストレスを解消したり、勉強や仕事などへの集中力を高める、という習慣がある人も多いようです。
また、アルファ波はすぐ消えてしまいやすいものでもあるようなので、休憩を適度に取ることでなるべくアルファ波を消さないような工夫も必要です。
ガンマ波
ワーキングメモリなどの脳の高次機能と深く関わりがあるとされている、ガンマ波。
これはシータ波とセットで発生するとされています。
そして、そんなガンマ波とシータ波が発生している時、脳内ではアセチルコリンという神経伝達物質と神経細胞が非常に活発に活動しており、脳には外から大量の情報がインプットされているといいます。
言ってしまえば、この時に脳は「かしこい状態」にあると言えます。
ガンマ波のコントロール方法
アメリカのウィスコンシン大学の実験で、チベットの仏教僧の脳波を測った結果、メーターが振り切れるほどのガンマ波が検出されたそうです。
これはつまり、ガンマ波がシータ波とセットであるため、瞑想の習慣を持つチベット僧侶の脳内では、ガンマ波が優位な状態になっていたということでしょう。
また、これはまだ一日20分の瞑想を始めて三週間しか経っていない者でも、一般人と比べて顕著な結果が出たとのことですから、修行僧でない私達でも一日の中に瞑想の週間を取り入れることで、変化を得られるでしょう。
瞑想については、こちらの記事で詳しく扱いましたので、ご参照ください。
或いは、アルファ波のように音を聴くことで発生を促すこともできます。
シータ波と同時に発生することを利用して、ここではシータ波の発生を誘発する音をご紹介します。
(左右で違う音が鳴っているのでヘッドホンをご使用ください。)
まとめ
ということで今回は脳波についてまとめました。
ふつうは、先述のように音楽をかけたり、或いは何か刺激を与えたり、例えば何か新たなことにチャレンジして好奇心を刺激して、シータ波を発生させたり、などによって脳波をコントロールするというのが一般的な方法でしょう。
しかし、先述のチベット仏教僧のガンマ波のように、一部には「脳波は訓練によって意識的にコントロールができる」という考えもあります。
人間の脳にはまだ分からないことがいっぱいありますね。脳波計が歴史に登場してからまだ100年も経っていませんから、当たり前といえば当たり前の話です。
とは言えその登場によって、それまでブラックボックスであった人間の脳について多くのことが分かってきているのも事実です。
私達が実際に脳波計を使って何かをするということはごく一部の人を除いてはあまりないでしょうが……それでも脳科学の研究者たちの発見を日常に活かすことはできます。
当サイトでは脳科学的なアプローチから勉強法についてご紹介した記事をご用意していますので、是非ご参考になさってください!
(参考)
情報処理学会 | 簡易脳波計による学習時の思考と記憶の比較分析
COMZINE | 池谷裕二 かしこい生き方のススメ
TOCANA | 瞑想中のチベット仏教僧の脳波を調べてみたら大変なことになっていた! 瞑想が脳にもたらす7つの効能を徹底解説!