ないと逆に損!?趣味の時間を持つことの、勉強における意外な有用性

モナ・リザ

突然ですが、みなさんには趣味はありますか?

スポーツ、音楽、アート、読書、映画など、人それぞれに色々とあると思いますが、逆に「これと言って趣味はない…」なんていう人もいるかも知れません。

しかし、もしそういった趣味がないと、実は勉強においてもマイナスだということをご存知ですか?

勉強や仕事に忙しくて趣味に割く時間なんてない…なんて人もいると思いますが、余暇の時間がないと趣味云々以前に、それは心身にとってリスクのあることですし、或いは「特に趣味になるような好きなものがない…」という人は、目の前のことしか見られていなくて、ちゃんと世の中にアンテナを張れていない状態かも知れません。

趣味があるということは、脳科学的にもメリットが大きく、そしてそれ自体、勉強に使える力を支える効果があるのです。

今回は、何か趣味を持つということの有用性について、ご紹介していきます。

脳科学的メリット

趣味と一口に言っても、その内容は多岐にわたりますから、あまり一概に言えることはない、かのように思えますが、実は多くの趣味と言われるものにおいて、脳のある働きが使われているのです。

それは「空間認知能」と呼ばれる働きです。

これは、その名の通り、空間の中でものの位置や形などを認識する能力のことですが、その文字通りの能力以外にも、時間を把握したりするときにも、この空間認知能は関わっています。
さらに、何らかについての思考・記憶をしたり、言葉を発したり、運動したりする時にもこの空間認知能は使われています。

また、人間の脳における空間認知中枢の隣に、数字を処理する部分がある影響で、空間認知能に優れる人には数字に強いという傾向も見られると言われています。

趣味が空間認知能を鍛える

先程も述べた通り、多くの趣味において空間認知能は使われています。

例えばスポーツをすれば、もちろん周りの空間を把握した上で運動を行うことになりますから、空間認知能を働かせる必要があるのは当たり前ですね。
それ以外にも、絵を描く時には何か目で見たものを紙の上で再現したり、頭の中でイメージしたものを描くわけですから、空間認知能が必要とされますし、読書や映画鑑賞においても読んだり映像で見たもののイメージを膨らませることになり、空間認知能が使われます。

また、音楽に関しても空間認知能を使用するようで、ニュージーランドのオタゴ大学のビルキー博士の報告によれば、音痴の人は空間認知能が低く、逆にリバプール大学のスラミング博士らによれば、オーケストラの楽団員は空間認知能が高い、という研究結果もあります。

このように、様々な趣味によって空間認知能は使われ、またそれによって鍛えられるようです。

感性・発想が鍛えられる

また、いま世界に名だたる大企業において、幹部たちにアートを学ばせるという流れがあるのをご存知でしょうか。

既存の手法・プロセスだけでは現実に発生する問題・課題に対処できない、ということからこのようなことが起きているわけです。
感性を高めることによって、これまでにない独自的な発想が可能になり、それがビジネス上におけるアイデアにもつながることが期待されているのです。

これは勉強においても有用ではないでしょうか?

今、教育制度全体において学生に求められているのは、単なる知識の詰め込み・暗記ではなく、自分で考える能力や発想を持つことであり、受験制度をはじめ様々な試験などの問題もその方向にシフトしていっています。

その意味でも、趣味を持つことで感性を刺激して、発想を鍛えるということは勉強においても必要と言えます。

例えば、2003年の東京大学の入試問題「円周率が3.05より大きいことを証明せよ」や、2006年の京都大学の入試問題「tan1°は有理数か?」などは非常にシンプルで短い問題ですが、それゆえに発想力を求められ、今となっては有名な問題ですが当時の受験生においてはどうすればよいのか全く分からない、という人が続出したのではないでしょうか。

文脈の読解力・思考力を高める

また、音楽やアート、文芸や映画などに関しては、単に感性だけで見聞きするものではなく、文脈の読解力も求められます。

例えば極端な例ですが、ジョン・ケージという現代音楽家による有名な楽曲として『4分33秒』というものがありますが、これはなんと「4分33秒の間、全く演奏音が鳴らない」という無音の音楽です。
この曲は、何も背景等を知らずに感性だけで聴いて感動する、という類の音楽ではないでしょう。

ジョン・ケージが偶発性・不確定性の音楽を追求している音楽家であって、その背景には東洋の禅の思想や「音楽とは演奏家が楽器を演奏して作るものだ」という固定観念への挑戦がある、などといった文脈がある上でこの曲は成り立っています。

また別の例として、フランスの芸術家マルセル・デュシャンの『泉』という作品は単なる「男子用小便器」ですし、過激なものとしてはアメリカの美術家クリス・バーデンの『シュート』という「自分の腕を至近距離から銃で撃たせる」といったものも存在します。これらもあくまで文脈に依存した作品と言えます。

勿論、これらの作品へのぜひはあるでしょう。しかし、これらを理解する・理解しようと努めることは、様々な文脈の読解力を高めることだと言えるでしょうし、そういった読解力は勉強というフィールドにおいても必要とされるものです。
また単純に、国語における読解力という部分もありますが「芸術等の世界における文脈を事前に把握した上で、目の前の作品の意味を考える」ということは、それ以上に思考力を鍛えるという意味が大きいと言えます。

まとめ

今回は、勉強の直接的な方法論というところから離れて、趣味を持つということの勉強における有用性、というテーマで様々な事例をご紹介しました。

ポイントは以下の三点です。

ポイント
  • 趣味の時間は脳の空間認知能を高める!
  • 感性や発想力を高めれば勉強にも有効!
  • 勉強にも使える読解力・思考力が鍛えられる!

一見、勉強と無関係なムダな時間にも思える趣味ですが、勉強にも活用できるような能力や効果があらわれることが期待できます。
勉強の息抜きにもなりますから、何かの趣味に費す時間を積極的に作ることを今回はおすすめしたいと思います。

ただ、くれぐれも趣味の方に夢中になりすぎて、勉強の時間がなくならないようにご注意を!

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