秘書、といえば社長のスケジュールを管理し、冷静沈着に立ち回る頼もしい存在。そんな秘書に必要な知識を問う「秘書検定」をご存知ですか。検定問題には社会人として必要なマナーと常識が詰まっています。「私、別に秘書を目指しているわけじゃないんだけど…」という就活生の皆さんでも、きっと学ぶところが多いと思いますよ。
秘書検定とは
秘書検定とは「公益財団法人 実務技能検定協会」が主催している検定試験です。秘書検定という名称ながら秘書を目指す人限定の資格というわけではなく、社会人として働く上での「常識」や「言葉遣い」といったマナー、上司をサポートする方法や効率の良い仕事の仕方等幅広い知識を問う試験内容となっています。検定試験の公式ページには、以下のように書かれています。
どのようにすれば良い印象を与えられるのでしょうか。秘書検定ではこの「感じのよさ」の表し方について,筆記試験問題と面接試験を通して提唱しているのです。
引用元:https://jitsumu-kentei.jp/HS/about/contents
秘書検定はビジネス面において重要な、対面した相手に「感じが良い」と受け取ってもらえるための知識や振る舞いを身に着けるための試験です。
準1級からは、筆記試験だけでなく面接試験も実施されます。面接試験では自分の人柄をよりよく受け取ってもらうための表現力が試されることになります。この表現力は就職・転職の面接の場において非常に大切な力です。
社会人としての常識や面接力を養える秘書検定は、就職活動を意識した学生から知識を確認したい社会人まで、さまざまな人に受験されています。
秘書検定の概要
秘書試験に受験資格はありません。レベルは3級、2級、準1級、1級の4つに分かれています。
3級・2級は筆記試験のみ(マークシートと記述式)、準1級・1級は筆記試験と面接試験があります。準1級の筆記試験はマークシートと記述式ですが、1級はすべてが記述式で難易度が高いことが伺えます。
すべての級の筆記試験は理論と実技の2領域に分かれています。理論で60%以上、実技で60%以上の合格率がなければ試験に合格できません。偏りのない学習が必要になります。
面接試験は与えられた課題をロールプレイング形式で実践する形式です。面接試験では正しい言葉遣いができているか、体勢や動作は良いか、明るさ、身なりなど総合的な観点から評価されます。
秘書検定ではどんな問題が出る?
秘書検定の筆記試験は、前述したように理論と実技の2領域に分かれています。さらにこの2領域は以下のように細分化することができます。
理論
必要とされる資質
秘書としてどのような資質が必要なのかを試される問題が出されます。求められる人柄や求められる能力について、状況に応じて正解にふさわしいものを選んでいくことになります。
では、公式ホームページから3級の過去問を見てみましょう。
秘書の仕事で心掛けること
次は新人秘書A子が先輩から,秘書の仕事の仕方として教えられたことである。中から不適当と思われるものを一つ選びなさい。
1) 日常的なことであっても,効率よくするとか質を高めるなどの工夫を常に考えながらすること。
2) 上司の仕事の手助けが秘書の仕事なので,上司が今何を欲しているかを察するようにすること。
3) 秘書は会社の経営に関することを知る機会があるが,そのようなことを知っても口外しないこと。
4) 仕事は上司からの指示を待ってすることになるが,しておいた方がよい仕事は自分からしておくこと。
5) 上司の私用は会社の仕事ではないので,私用と思われることを頼まれたときは私用かどうかを尋ねること。引用元:https://jitsumu-kentei.jp/HS/example/contents
この分野では上記のような「自分で考えて解く」問題が出題されます。暗記では歯が立たないので、問題集を繰り返し解いて問題の傾向をつかみましょう。
職務知識
秘書の役割や秘書の業務について、職務上知っておかなければならないことが出題されます。秘書の仕事の具体的な中身が分かる項目ともいえるでしょう。
では、公式ホームページから3級の過去問を見てみましょう。
書類を届けるよう指示されたら
秘書A子が先輩E子の仕事を手伝っていたところ,上司から「今からこの書類をT社に届けてもらいたい」と指示された。このような場合,A子はどのように対応するのがよいか。次の中から適当と思われるものを一つ選びなさい。
1) 上司から書類を預かり,E子の仕事が終わってから書類を届けに行く。
2) 上司から書類を預かり,E子に事情を説明してT社に書類を届けに行く。
3) E子に先に書類を届けに行ってよいか尋ね,よいと言われたら届けに行く。
4) 上司に,今E子の仕事を手伝っているがどちらを優先すればよいかと尋ねる。
5) 上司に,今E子の仕事を手伝っているのでE子にも話してもらえないかと言う。引用元:https://jitsumu-kentei.jp/HS/example/contents
この分野も「自分で考えて解く」問題です。秘書としてどのように考え、行動すればよいかを考えてみましょう。また、職務知識の中には秘書が行うことだけでなく、「秘書が行ってはいけないこと」についての知識も含まれています。秘書はあくまで「上司の代理」であり、越権行為が起こらないよう注意を払う必要があるのです。
一般知識
一般知識では、オフィスでよく使われる用語について学びます。
では、公式ホームページから2級の過去問を見てみましょう。
略語の正しい組み合わせ
次は略語とその省略されていない語の組み合わせである。中から不適当と思われるものを一つ選びなさい。
1) 都銀 = 都市銀行
2) 時短 = 時間短縮
3) 定昇 = 定期昇給
4) 約手 = 約束手形
5) 国保 = 国民年金保険引用元:https://jitsumu-kentei.jp/HS/example/contents
コンピュータ用語から、人事・労務・会計・税務まで、範囲は幅広いですが、よく出る用語にポイントを絞って暗記することで効率の良い勉強ができます。会社全体の仕組みを学ぶことができる分野ととらえましょう。一般知識は暗記中心ですので、試験勉強もしやすいと思います。
実技
マナー・接遇
敬語の使い方、電話の取り方から冠婚葬祭マナーまで、社会人として身に着けておきたい常識が詰まった分野です。
では、公式ホームページから3級の過去問を見てみましょう。
「参る」の使い方
次は山田部長秘書A子の言葉遣いである。中から下線部分の「参る」の使い方が不適当と思われるものを一つ選びなさい。
1) 「銀行には私が参ります」
2) 「お車がただ今参りました」
3) 「書類をお届けに参りました」
4) 「当社へ参っていただけませんか」
5) 「私どもの山田が参ると申しております」引用元:https://jitsumu-kentei.jp/HS/example/contents
ここで学んだ知識は、秘書に関わらずどんな仕事にも生かすことができるでしょう。
技能
秘書としてオフィスワークをスムーズにこなすための技能知識を勉強します。会議の知識や文章作成の知識、資料の整理の知識などが問われます。
では、公式ホームページから準1級の過去問を見てみましょう。
伝言メモの書き方
秘書A子(渡辺)の上司(山田部長)が外出中に,系列会社M社の高橋氏から電話がかかってきた。 次はそのときのA子と高橋氏とのやりとりの一部である。 この内容から,上司の机上に置いておく伝言メモを枠内に書きなさい。
(11月5日 午後2時)
A子 「あいにく山田は外出しておりますが,4時には戻ってまいります」
高橋 「実は明日の朝9時から緊急会議を開くことになったのですが,非常に重要な会議で,部長さんにぜひ出席していただきたいのですが」
A子 「かしこまりました。それでは戻りましたらそのように申し伝えます。明日の午前9時から,場所は,御社会議室でしょうか」
高橋 「第2会議室で行います。それと,必ず『例の資料』をお持ちくださいとお伝えいただけますか」
A子 「『例の資料』で分かるのでしょうか」
高橋 「それで分かります」引用元:https://jitsumu-kentei.jp/HS/example/contents
※ここで紹介した過去問の解答は公式ホームページに掲載されていますので、気になる人はチェックしてみてください。
秘書検定は役にたつ?役に立たない?
秘書検定という名前からして、「秘書になりたいならこの試験に合格すればよいのだ」と思う人もいるでしょうが、秘書検定はあくまで検定試験であり、試験に合格したからと言って秘書になる資格が発生するわけではありません。
しかし、秘書検定には「社会人として身に着けておきたい常識・マナー・心構え」が詰め込まれています。ある意味で秘書を目指すならこの試験に出題される知識や考え方は最低限持っておきたいところでしょう。
では秘書を目指しているわけではない人が秘書検定を受験する意味はあるのでしょうか。秘書試験は簿記やTOEICのように何か特定の技能ができることをアピールするものではないので、就職や転職の際に強力な武器になるような資格とは言えないかもしれません。
しかし、秘書検定には以下のようなメリットもあります。
・デスクワークをしたことがない人でも、電話の取り方や敬語の使い方を学ぶことができる
・面接試験のある1級、準1級を目指すことで就職・転職の面接に備える
・すでに社会人として働いている人が、ちゃんとした常識が身についているのか確認し自信をつける
・社会人経験のない学生が一般常識を身に着けていることをアピールする
秘書検定の活かし方は、その人次第ということができるでしょう。
秘書検定を勉強して社会人レベルを上げよう
秘書検定は秘書を目指す人だけでなく、会社で働く誰もが必要な知識が詰まっています。社会人としての自信がイマイチ持てない…という学生や転職者にもお勧めです。
秘書検定を勉強して社会人としてのレベルアップを狙ってみませんか。
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