大学受験で、地理という教科を記述式二次試験に利用する方はあまり多くありません。
地理学科志望者や、特に地理に関してはどんなタイプの問題でも自信があるという方だけが使う傾向にあります。
あとは、センター試験でだけ利用する科目という位置づけの方が多いようです。
地理はセンター試験社会の科目の中でも、新たに覚える項目が少なく負担が軽いと言われている科目です。
ところが二次試験利用になるとグッと難しくなるので、実際には使いにくいと感じる方も多いようです。
ですが、コツを押さえてちゃんとインプットとアウトプットの練習を繰り返せば、得点源になりやすい科目でもあります。
私も実は、教科書を一通り覚えた程度で受けた試験の偏差値40から、たった4ヶ月で一気に80近くにまで上げた経験があります。
今回は、そんな大学受験における地理の学習について、そのインプットとアウトプット方法、そして学習のポイントをご紹介します。
目次
大学受験科目としての「地理」は本当に簡単で負担が少ないか?
大学受験で、特にセンター試験でだけ地理を利用する人にとっては、「社会科目の中で地理が一番の楽勝」「日本史・世界史や政経と比べたら簡単」などといわれています。
確かに、地理では暗記しなければいけない「数字もの」は、地圏や地形、気温、降水量、特筆すべき災害などの年度にかかわる数字などが代表的なもの。
特に文系受験者が選択することも多い日本史世界史や政経などについては、数字の羅列を語呂合わせで覚える人もいる中、各種の年代や出来事に関する数字が多いほど難しいと理解されている部分もあります。
ところが、実際のところ地理でも、意外と覚えるべきデータの数値が多いことはご存知でしたでしょうか?
問題を特上で、先ほどの「数字もの」の地圏(地球上の最高点、最大面積、最深ポイントなどからランキング等各種)や地形(各大陸の地圏や水圏の長さや面積、主要な利用状況や、代表的な生物他のランキング等)、気温、降水量、風向きなど(代表的都市や地点について各月値と10年ごとや、もう少し大きな気候変動などがあったと思われる時代のデータ)、特筆すべき災害などの年度にかかわる数字に加えて、各種統計数値がまず必要となります。
受験に頻出のものとしては
- 貿易の金額や量や主要品目の近年(1年ごとと十年単位で数十年分のデータや、断片的に残る貿易や輸送、製造、販売等を表すテキスト)の数字
- 主要国(先進国や新興国、データ上特筆すべきエリア)などの人口、年齢、地域分布、人口密度、雇用、製造、貿易、物流量、人的移動の数字等
- 農水産鉱業などの生産量や地点関連データ、各種統計。環境関連数値(焼失面積や流出量、人口変化、土地利用状況変化他)
- 災害や戦争、国の統一や独立などの年や人口移動、自然増減の傾向、特筆すべき出来事による主要な変化
- 美術や文学科学といった主要作品や理論、人物とそれら栄えた時代や売買が多い時代、近年の売買事例など
「日本史世界史政経」よりも文字や図表を大量にインプット!
例えば各大陸の山名や川名、都市名、特徴的な生物と主要な生物名やその現地名。
各地域の人種分布や年代による移動と呼び名などを覚える必要があります。
さらには、図表や地図そのもの、コンターと呼ばれる線での地形表記などによって、どの大陸のどのくらいの範囲のエリアで、この特徴であれば具体的にどこであるかといったことも覚えなければいけません。
受験先の大学によっては、白紙上に、とあるエリアの地形を線で描かなければならない問題なども過去には出されていました。
日本国内ならまだしも海外についての出題であれば、よほど地理に通じていなければ相当高い難度の問題です。
図表の中には、統計資料としてはあまり目にしない「地図の1レイヤー」と呼ばれる、農地・業種・工場の分布、市街地や学校などの分布などもあります。
地形を形作る様々な原因につながる特徴や形成過程を知った上で、世界中の特徴的な場所と、その見極め方を理解しておく必要があります。
このように地理は、実は非常に暗記項目が多い科目です。
暗記のバリエーションが多いものの、覚えたデータ間の有機的な関係性が見えていれば、特にひねった出題が少ないのでマークシート特化型の理論を含めたインプットとアウトプットだけで対応できることが多いです。
一方で、歴史や政経系科目とは異なり、教科書類は一切読まずにいきなりマークシート問題集を解き始める勉強方法では点数が上がりにくい科目でもあります。
地理は「その他データも含めてテキストについて論理的整合性を確かめながら覚えるのが中心の科目」とよく言われており、単に覚えるだけの記憶では不安で、他の方法から前後関係や原因結果を照合して答えることが得意な方には、比較的向いている科目といえるでしょう。
センター試験で出題される範囲は教科書と資料集の範囲で、小中学生時代からの大きなニュースや話題をおさえることで、ほぼカバーできるといわれています。
「教科書資料問題集が完璧」で、かつ以前の「ムーミン問題」のような特殊なものさえなければセンター地理は比較的高い得点を出しやすいと思われます。
しかし2次試験で利用しようとなると、この後ご紹介するものも含めて、常に受験勉強とは別のアンテナも張り巡らせておく必要があります。
受験対策のオススメの参考書!
大学受験における地理対策について、「センター試験用の勉強と二次試験用の勉強とでは、その方法や範囲にはかなり違いがありそうだ」というのを感じた方もいらっしゃるかもしれません。
地理の対策として、基本的には「教科書や資料集(統計系と地図帳付録の資料)」を覚えて試験に臨むのが定石です。
教科書の記述量自体は、最も文字数が多いものでかつコラム全てを覚えたとして、例えば山川の日本史や世界史の教科書と比較しても、文字数は同じ程度かそれよりやや少ないくらいです。
「統計資料付き地図帳の各種資料」に加えて、新しいデータが掲載されている「傍用統計資料集」は、ほぼ進学校では丸暗記必須レベルとなっています。
この他に、センター試験でも二次試験でも、「白地図問題」や「地図地形の読み込み系問題」に関連した問題は、教科書資料集にあまり多くないながら出題の頻度は高いです。
白地図を使おう!
地理対策について、良書が多くないと言われる中、これだけは押さえておきたいものがあります。
それは白地図を使って自分なりの世界地図を作成することです。
参考 白地図白地図ページのコピーを取って、自分で理解しやすい「書き込み版国別ページ」を作ります。
地図の場合、例えば農作物や気候帯、山や川、都市圏などを白地図に重ねて描き込んでいけば、それぞれの要素は「レイヤー」という重なりで表されます。
このレイヤーとは、白地図に1枚透明のシートを重ね、その透明シート上に「このエリアに該当する全部の農作物だけを描きなさい」や「このエリアに該当する山や川からそれぞれTOP10だけを描きなさい」というもの。
例えばGoogleマップなどを使って、スマホでこうした地図を出力すると非常に見やすくなります。
ですが一般のインターネットで提供されている地図情報では、受験向きの各地点を自動で描いてくれるものはあまり存在しません。
そこでこれを受験勉強用に、自分で紙に描いて、いつも眺めるようにすることをオススメします。
筆者が現役受験生の頃にはあまり良い白地図がなかったので、周囲が各大陸や主要な出題ポイントの海岸線や山などは暗記して、その範囲や位置を線で誰もが描ける状態にするべく何度もノートに絵を描いていました。
そうして世界の主要な地図情報を地図に落とし込めたり、白地図で再現できたりした上で、暗記用の国別ページを作っていた人の多くは、センター試験でほぼ9割以上の点数でした。
まず用意すべきは「世界各国の白地図」が掲載されている本です。
シンプルな線で見やすいものであればどれでもOKです。
それをコピーし、例えば授業で習う順番に沿って白地図に情報を書き込んでいきます。
私の場合は下記の順番で書きました。
- 気候や気象
- 主要な天災
- 農作物
- 山や川
- 主要な鉱産物資源
- 主要な製造・貿易集散地
- 主要な各産業分類
- 人口密度と人種構成
- 第一言語・第二言語など
順番については各人が覚えやすければいいので、人によっては「気候や気象+農産物」を1枚に描いたり、あるいは見易さ優先で「主要な製造・貿易集散地」だけを1枚に描いてもOKでしょう。
縮尺を統一しておけば全体の距離感やスケール感が掴みやすく、また拡大した地図が必要な時は各分野や各ページで、基本の地図の横に置けば地理でよくある複合的な「スケール問題(距離や地形の影響)」なども一見して分かりやすくなります。
地図に描くときは、それぞれを色で分けたり記号にして記入したり、棒で横に引っ張って文字を書くとよいでしょう。
人によっては、模試や問題集、過去問で見かけた変わった問題もジャンル別に地図にまとめて記録していく方もいます。
さらに、ニュースで見かけたあらゆる話題、過去15年分くらいはセンターでも二次試験でも出題されやすいものです。
しかも予備校などの予想問題時期になるまで準備をしていない人も多く、受験生全員が間違える問題となりがちなので、こういった話題も日々新聞やニュースをチェックして、白地図に分野別に印をつけてまとめて記入していけると尚よいでしょう。
全部完成したら単元やジャンル毎、あるいは地域毎に分けて1冊にまとめておきます。
詳説地理ノートを使おう!
ここまでの作業を行う間に、参考にしておくと点数がUPしやすい「地理ではおすすめの参考書」があります。
それが山川出版社の『詳説地理ノート』です。
参考 詳説地理ノート文字数は多めですが、これによりあらゆる地理の問題へのアプローチの仕方、問題を解くために必要な手法を学ぶことができます。
地理学習者が点数を失いがちな「ちょっと古めで学校や模試ではあまり解かなかったタイプの問題」も含めて、オールラウンドな力を付けたいならぜひ手にとってみてください。
また、白地図作成の前に、地理はセンターでしか使わないという人にもおすすめの参考書として、三省堂「入試地理 新地形図の読み方」が挙げられます。
時間が取れる日に読めば1日で読み切れるほどに、内容が凝縮した1冊です。
特にセンターやマークシート方式の二次試験では配点比率が高いことも多く、クイズのような地形図問題に対応できる力が付きやすいです。
こういった本を利用しながら、白地図に描く情報自体を大きく2つのグループに分けて、センター用と二次試験用に整理しておくのもおすすめ。
「学校で習った比較的新しい情報」と「ちょっと古い情報やニュースなどで出た情報」に分けておけば、前者ではほとんどのセンター試験範囲に対応が可能で、残った部分は二次試験対応として、それぞれ集中的にインプットすることができます。
私はこのようなノートを用意し、直前対策も当日対策もできたのでおすすめの方法です。
全体的な勉強の時期配分が大切!
多くの受験生にとっては主要科目ではない地理。
もし地理学科に出願していても、地理の配点が最も大きいという大学はほとんどありません。
良くても全体の4割以下。
配点自体が少ないので、地理の場合は覚えたものが抜けやすく、入試直前に繰り返しインプットしなければならない英語や数学などとは試験への対策方法が異なってきます。
定期テストなどと重ならない時期に集中してノートや白地図作りとインプットを行い、その後は模試や問題集を定期的に解くというスタイルにすればOK。
主要科目とは暗記の方法が異なる部分が多い地理の場合、かなり記憶自体も残りやすいもの。
一度作成したノートなどを見直すだけで、かなり復習できます。
地理の場合、高校3年生の春休みあたりにまとめてインプットをしてしまえば、あとは定期テストの度、あるいは授業を聞きながらノートを確認するだけでもかなり定期テスト対策には繋がります。
そのためアウトプット期は、受験前は定期テストと模試直前期中心に行うだけ。
またこれらの採点解答などが返ってきたときに、手持ちの問題集の中から、苦手問題や必須重要問題だけを回すといったスタイルにすれば、科目自体の負担もかなり減ります。
私の場合、1ヶ月前後でノートを作成しながらインプット学習を行い、その後は手持ちの問題集で全範囲を間違えなくなるまで解くという方法を採っていましたが、ほとんどテストでは間違えることが無くなる頃には偏差値が大幅に伸び始め、その後は維持のためにノートを見るだけで過ごせました。
地理に充てる勉強時間が減ったおかげで、主要科目に時間を割くことができ、ゆとりも生まれました。
予備校などでも配点の低い科目は、高校2年生から3年生の春休み前までには全範囲のインプットと基本問題集1冊は終えておくことが重要と言われていますが、地理をはじめ理系にとっての社会科目、文系にとっての理科科目は、特にこのような時間配分がおすすめです。
とりわけ地理の場合は、覚える情報が浅く広くのため、忘れない程度に維持することが大切。
自分の忘れ方の種類を「時間が空いたら忘れる」のか、あるいは「他の科目など新しいことをたくさん覚えたら忘れる」のかなどの特徴に合わせて分類し、年間の中で、それぞれの傾向に応じて問題演習時期を設定しましょう。
また、自分の問題演習時や模試などの減点原因を分析することも大切です。
これには例えば下記のようなケースが考えられます。
- 一度解いた問題は解けるけれど応用力がない
- 特定の分野だけ弱い
- 複合問題のとき関連付けて各分野や各エリアを考えられない
- 文章の表現部分が弱い
こういった演習時期の適正化と&傾向に応じた復習の省力化・効率化は、トータルな受験勉強の時間にとってかなり意味ある節約にもなりますし、モチベーションや得点を上げる状態にもっていきやすくなります。
まとめ
いかがでしたか?
今回は大学受験地理学習のポイントをご紹介しました。
カードなどを作るよりは、「まずは」しっかりと自分で見やすい一元的なノートをまとめるほうが「受験勉強のための作業」全体を省力化させてくれます。
全体としては「ノート類まとめ」→「問題演習」→「あとはノート見直しと問題演習での維持」だけで急に偏差値自体も伸びやすい科目が地理です。
また、多くの人が本腰を入れるのは夏休みなので、それ以前にしっかり取り組んでおくのがおすすめです。
一度成績アップが実感できれば、その後のモチベーションや受験勉強全体の自信にもつながります。
こういった自分のモチベーションや気持ちを最後まで支えることができるちょっとしたコツや成果実感のポイントもおさえつつ、学習を進めていくと良いでしょう。
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