電気のスペシャリストとして一目置かれるのが電気主任技術者です。しかし、その難易度の高さゆえに、資格を取得できる人が少なく、勉強しても諦めてしまう人も多い傾向にあります。その反面、転職、給与、昇進などで絶大の威力を発揮する資格です。どうしても取得したいという人のために、今回は第三種電気主任技術者試験に一度で合格した著者が、その勉強方法を解説します。
第三種電気主任技術者試験とは?
第三種電気主任技術者試験は、電気主任技術者になるために必要な資格試験です。試験の概要と資格取得のメリットについてご説明します。
試験の概要
第三種電気主任技術者試験は「理論」、「電力」、「機械」、「法規」の4種類で成り立っています。これらの科目を全て合格することが資格取得の条件です。一度合格した科目は翌々年度まで免除されるので、3年間ですべての科目に合格すれば免状を取得できます。
また、意外かもしれませんが、電気工事士と異なってケーブル配線といった実技試験がないのが特徴的です。
試験は9月上旬に開催され、受験費用はインターネット申し込みが4,850円、郵便による申し込みが5,200円になっています。
資格取得のメリット
電気設備管理では事業所に必ず一人電気主任技術者を雇うことが条件とされています。そのため、資格保持者を確保する目的で採用を行う企業が多く、就職活動で有利に働きます。
また、主任という役職=電気主任技術者のことを表すため、資格取得者は必然的に主任に就くようなキャリアコースを歩めるという最大のメリットがあります。この点が電気工事士資格にはない魅力といえるでしょう。
また、資格取得により給与額のアップも期待できます。相場として月あたり3,000円から10,000円の上乗せが一般的です。
電験三種の科目別学習方法
電気主任技術者試験は毎年科目ごとに難易度にばらつきが目立つのが特徴的です。また、それぞれの分野ごとに暗記すべきものと理解すべきものが顕著に分かれている点も押さえておきたいポイントです。そのポイントを踏まえて学習方法をお伝えします。
理論
静電気、電磁力、直流回路、交流回路などの分野から出題されます。理論分野は計算問題が中心となりますが、丸暗記をすると少し問題を捻られると解けなくなってしまいます。したがって、公式についてイメージを湧かせる学習をおすすめします。
例えば、直流回路の分野ではV(電圧)=I(電流)×R(抵抗)というオームの法則が頻出されます。この公式は釘がたくさん刺さった板にビー玉を流す光景をイメージすると理解しやすくなります。
V(電圧)は板の傾斜の角度、I(電流)はビー玉、R(抵抗)は釘として仮定しましょう。一定数の釘がささった板の傾斜を上げていくと、ビー玉の流れは勢いが増していくと想像できます。つまり、抵抗値が一定の状態では電圧は電流の値に比例していくことがわかりますよね。
このように理論で登場する公式を学習する際には身近な例を用いてわかりやすく理解するようにしてください。
電力
電力は、電気がどのように送電、配電されているかについて理解できているかを問う科目です。したがって、発電所で電気が生成されてから、私たちの職場や自宅に電気が届けられるまでの過程を理解することが大切といえます。
そこでおすすめの学習方法が送配電の過程をシミュレーションすることです。一般的に、発電所で発電された超高圧の電圧は送電線を伝っていき、必要に応じて変圧器という機械で高圧や低圧に変換され、それぞれのビルや家などに引き込まれていきます。
そのシミュレーションの中で、発電所の仕組みやケーブルの種類、変圧器の役割などを具体的に思い浮かべるようにするのです。
電力の学習をするたびにシミュレーションしていくことで、一つの知識を思い出すと芋づる式にほかの送配電に関連する知識を思い出せるようになるため、高い学習効果が期待できます。
機械
電験三種4科目の中でも機械科目の難易度はかなり高い傾向にあります。モーター、発電機、変圧器の概要に関する知識問題だけでなく、その仕組みを踏まえたうえで電圧や電流のほかにトルク、回転数など日常であまり馴染みのない値を求める計算問題が頻出されるからです。
それを踏まえて、この範囲に関しては難易度の高い問題は避けて、必ず得点を獲得できる他の分野の学習に注力することをおすすめします。
機械分野では、上記のテーマのほかに高校レベルの知識を活用できる電気加熱や電気化学の分野も出題されます。その点で、高校の物理や化学の参考書と見比べて学習すれば、比較的楽に理解できることでしょう。
そのほか、電気とは異なる情報分野の出題も得点を稼ぎやすい傾向です。2進数から10進数に変換する問題などが出題されることもあります。一度解き方を覚えれば次に解けるようになる問題ばかりなので、一問でも多く経験することが重要です。
法規
電気は取り扱いが危険なものであることから、設置や工事の仕方について電気設備技術基準をはじめとする各種法律で事細かに制限されています。
電験三種の試験ではこれらの法律の条文がまったく同じ条文が虫食い形式で出題されます。そのため、条文を覚えてしまえば空欄に入る語彙が必ずわかり、確実に得点できるのです。
勉強の仕方としては、まず、条文が全て網羅されている法律書を一冊用意することから始めます。ノートの半分に虫食いにした条文を書き写して、もう半分にその空欄に入る用語を答えとして記載するという具合です。
ただ、すべての条文を書き写すのは膨大な時間がかかってしまいます。そのため、過去問等でどのような条文が出題されているのか傾向をつかむことが最優先です。
20年分の過去問題集が販売されているので、一通りこなすとどのような条文に的を絞って学習すればよいかわかってきます。法規に関してはぜひ20年分の過去問を解き切ることをおすすめします。
まずは電気工事士の資格取得がおすすめ
以上、第三種電気主任技術者試験の概要や、各科目のおすすめの学習方法を紹介しました。電気主任技術者の学習をしているうちにどうしても内容が頭に入ってこないという場合もあるかと思います。それは電気に関わる事前の基礎知識が不足していることが原因かもしれません。
その際は電気工事士の資格取得から始めてみてはいかがでしょうか。実技試験などで具体的な電材に触れて配線の方法を学ぶだけでも基礎知識の充実化を図れます。
そのほか電気設備管理の仕事を経験して、具体的な電気設備の操作を経験する過程でも電気の知識が深まります。実務経験を踏みながらコツコツ学習していけば合格の可能性はさらに高まることでしょう。
今回紹介した勉強法を参考に、ぜひ第三種電気主任技術者試験にチャレンジしてみてください。
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