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学校では決して習わない特別講座へようこそ
学年が上がるにつれて、より広く、より深く、掘り下げられた知識を学習します。
中学2・3年になった時点で中学1年の知識を振り返ってみると…
「ああ、なるほど!そう繋がっているのか!」
このように理解できることがたくさんあるのです。
しかし実際問題、学校では授業時間の制限がありますので、振り返りの講義はなかなかしてくれません。
本記事では「気体の空気との重さ比べ」という単元を、別の視点から振り返り講義いたします。
さらに記事の後半では新鮮でユニークな学習法「またぎ学習」をあなたに提示しましょう。
中学1年ではこんな暗記問題に出会ったはずです
中学1年で学習する「気体の空気との重さ比べ」の問題は次のようなものです。一度解いてみてください。
次の各気体について、空気より軽いものはア、空気より重いものはイとそれぞれ答えよ。
(1)アンモニア (2)酸素 (3)水素 (4)窒素 (5)二酸化炭素
↓解答は下にあります↓
↓
↓
↓
↓
↓
(1)ア、(2)イ、(3)ア、(4)ア、(5)イ
いかがでしたか?
中学2年、もしくは中学3年以降になるとそろそろ「忘れちゃった…」となっているのではないでしょうか。
当初はただただ「1つずつキッチリ覚える」必要があった知識であり、苦手意識がある方も多いのです。
しかし、今の皆さんの学習状況であれば「一気に繋げて覚える」ことができるのです。
ここで使えるテクニックが、高校で学習する原子量というものです。
原子量
水素・炭素・窒素・酸素の4つの原子の重さ(原子量)の比は決まっています。
特にこの4種類の原子量は覚えておくと便利ですので、早速重さの比を覚えていただきます!
H(水素原子)=1 とすると
C(炭素原子)=12
N(窒素原子)=14
O(酸素原子)=16
この4種類です。Hが1gであれば、Cは12g、Nは14g、Oは16gといった感覚で結構です。
中学校や高校の先生はこれらの数値を基準にして、あなたの成績や合否を決める問題をつくっています。
中学校の先生は、ふつうこの数値の関係を教えてくれません。
逆の発想をすると、これらを覚えていれば、問題の根幹が一気に分かる可能性があるということになるのです。
「水平リーベ、僕の船…」で有名な「H、He、Li、Be、B、C、N、O、F、Ne…」という原子番号順を覚えている方はラッキー!
今回出てきた1、12、14、16という原子量も、次のように合わせて覚えてしまうことができますよ。
Hは原子番号「1」番なので、そのまま原子量は「1」です。
Cは原子番号「6」番なので、原子量は2倍して6×2=「12」と計算して求められます。
Nは原子番号「7」番なので、原子量は2倍して7×2=「14」と計算して求められます。
Oは原子番号「8」番なので、原子量は2倍して8×2=「16」と計算して求められます。
では、この4種類の原子量と中学2年以降の知識を用いて、中学1年の知識の理解を深めてみましょう。
空気の重さ
空気に含まれる気体については、中学2年の人体の単元、もしくは小学校の時点で学習している知識ではないでしょうか。
空気はN2(窒素)とO2(酸素)が約4:1の割合で混合した気体と考えることができます。
言い換えると、空気全体100%の重さのうち、N2が80%、O2が20%をそれぞれ占めるということですね。
そこで、空気の重さを原子量を使って次のように決めてしまいます。
・N2の重さを14×2=28g とする
・O2の重さは16×2=32g となる
・空気の重さは28g×(80%÷100%)+32g×(20%÷100%)=28.8g となる
この28.8gを基準として、軽ければ「空気より軽い気体」、重ければ「空気より重い気体」となるのです。
※実際は空気中にアルゴンや二酸化炭素なども含まれていますが、ごく微量なので考えないものとしましょう。
各気体の重さ
それでは各気体の重さを求めて、空気との重さを比較してみましょう。
①窒素
空気中に最も多く含まれている気体。水に溶けにくいので水上置換(法)で収集可能です。
化学式N2なので、14×2=28gと求められます。28.8gの空気より少し軽い気体ですね。
空気の28÷28.8≒0.97倍の重さであることも計算できます(実際の数値も0.967倍程度)。
②酸素
空気中に2番目に多く含まれている気体。水に溶けにくいので水上置換(法)で収集可能です。
化学式O2なので、16×2=32gと求められます。28.8gの空気より少し重い気体ですね。
空気の32÷28.8≒1.1倍の重さであることも計算できます(実際の数値も1.105倍程度)。
③二酸化炭素
空気中に4番目に多く含まれている気体。水に少ししか溶けないので一般的に水上置換(法)で収集可能。
化学式CO2なので、12+32×2=44gと求められます。28.8gの空気より重い気体ですね。
(空気より少し重いO2(酸素)にC(炭素)の重さが加わっているわけですから、空気より重いのも当然ですが…)
空気の44÷28.8≒1.53倍の重さであることも計算できます(実際の数値も1.529倍程度)。
④水素
金属を溶かすことで発生する気体。水に少ししか溶けないので一般的に水上置換(法)で収集可能。
化学式H2なので、1×2=2gと求められます。28.8gの空気よりとても軽い気体ですね。
空気の2÷28.8≒0.07倍の重さであることも計算できます(実際の数値も0.0695倍程度)。
⑤アンモニア
有毒な気体。水に溶けやすく空気より軽いので上方置換(法)で収集可能。
化学式NH3なので、14+1×3=17gと求められます。28.8gの空気より軽い気体ですね。
空気の17÷28.8≒0.59倍の重さであることも計算できます(実際の数値も0.597倍程度)。
⑥塩化水素
有毒な気体。水に溶けやすく空気より重いので下方置換(法)で収集可能。
化学式HClなので、1+35.5=36.5gと求められます。28.8gの空気より重い気体ですね。
※塩素の原子量は35.5です。
空気の35.5÷28.8≒1.23倍の重さであることも計算できます(実際の数値も1.268倍程度)。
⑦一酸化炭素
有毒な気体。炭素の不完全燃焼(酸素が少ない状態で物質を燃焼する)で生じる。
化学式COなので、12+16=28gと求められます。28.8gの空気より少し軽い気体ですね。
空気の28÷28.8≒0.97倍の重さであることも計算できます(実際の数値も0.697倍程度)。
ここで初めて、火災警報器が天井に設置される理由が、数値として理解できたのではないでしょうか。
不完全燃焼が発生している危険な環境下で、空気より軽い一酸化炭素が上に昇っていくのです。
⑧メタン・エタン・プロパン・ブタン
家庭などで使われている都市ガスは、メタンガスを主成分としています。
プロパンガスは家庭用、ブタンガスは工業用として使われているLPガス(液化石油ガス)です。
・メタンは化学式CH4なので、12+1×4=16gと求められます。28.8gの空気より軽い気体ですね。
・エタンは化学式C2H6なので、12×2+1×6=30gと求められます。28.8gの空気より少し重い気体ですね。
・プロパンは化学式C3H8なので、12×3+1×8=44gと求められます。28.8gの空気より重い気体ですね。
・ブタンは化学式C4H10なので、12×4+1×10=58gと求められます。28.8gの空気より重い気体ですね。
都市ガス(空気より軽いメタンガス)用のガス警報器は天井に設置されます。
対して、LPガス(空気より重いプロパンガスやブタンガス)用のガス警報器は床に設置されます。
新しい視点での学習法「またぎ学習」
本記事では「空気との重さ比べ」を紹介いたしましたが、お土産として新しい視点での学習法を提示しましょう。
それが、「またぎ学習」というものです。
暗記と計算の「またぎ学習」
次のような事柄が当てはまる方はいらっしゃいませんか?
「暗記は得意だけれど、計算は苦手…」
「計算は得意だけれど、暗記は苦手…」
さて、本当に「暗記」と「計算」は二項対立として完全に分かれているのでしょうか。
答えは“NO”です。
今回講義いたしました「空気との重さ比べ」の暗記事項は、計算によっても求めることができました。
暗記が苦手!という方からすればこれ以上に嬉しい出来事はないでしょう。
(もちろん、原子量や化学式は覚える必要がありますが…)
「苦手単元は、得意な勉強法で克服できる可能性が秘められている」ということです。
暗記が得意であれば、計算単元でルールを「覚えて」しまって楽ができないか。
計算が得意であれば、暗記単元で「計算」によって数値を導き出すことができないか。
このような考えを常に持ちながら勉強に取り組んでみましょう。
暗記と計算の垣根を「またいで」、自らの得意とする領域に引きずり込んでいくのです。
学年と分野(教科)の「またぎ学習」
「空気との重さ比べ」は本当に中学1年の単元なのでしょうか?
原子量から計算する方にとっては、中学2年・中学3年・高校の単元だ!と感じられるでしょう。
「学年をまたいで見渡せば、繋がる可能性が秘められている」ということです。
今の学習に行き詰まったときは
- 過去の学年の教科書やノートから共通点や繋がりを発見し、理解への近道を築く
- 未来の学年の授業内容を先取りし、理解への近道を築く
このような方法を取ってみると楽しく学習できるでしょう。
さらに、次のようなこともいえます。
- 環境問題や時差計算で、社会と理科を繋げる
- 連立方程式で、理科と数学を繋げる
- 国連の機構の頭文字で、英語と社会を繋げる
「教科をまたいで見渡せば、繋がる可能性が秘められている」ということですね。
Reserch&Categorize(調査と分類・リサーチ&カテゴライズ)
「またぎ学習」をするために大切なのは、広い視野での調査と、明確な分類です。
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学年や教科が分けられているのは大人の勝手な都合です。
その節目を壊し、あなたが最も納得するオリジナルな境界線をつくりましょう。
「分ける」ことで「分かる」ことができるのです。この2語の語源は同じですからね。
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