待機児童が社会問題になり、女性の就業率が伸びる中、保育士の需要は高まるばかり。保育士の資格を持っていれば、職場に困ることはないでしょう。また保育士は出産・子育てを経験した女性がその経験を生かせる職業としても、とても魅力的です。とはいえ、社会人になってから保育士を目指したくても学校に通っている時間がない人は多いのではないでしょうか。
ところが、保育士になるには必ずしも学校に通う必要はありません。保育士試験に合格すれば学校を卒業したのと変わらない、保育士の資格を手に入れることができるのです。
保育士試験は受験科目が多く合格率も低い難関試験ですが、コツを押さえれば、仕事と受験勉強を両立することも可能ですよ。
保育士試験とは
受験資格
保育士試験の受験資格は最終学歴によって分かれている点が特徴です。
- 学校教育法に基づいた大学の卒業生・2年以上在学し、62単位以上取得後の中退者
(あるいは年度中に2年以上在学・62単位以上取得予定の在学生)
→ 保育士と関係ない学部でも受験資格があります。 - 学校教育法に基づいた短大の卒業生・年度内に卒業予定の在学生
→ 保育士と関係ない学部でも受験資格があります。 - 学校教育法に基づいた修業年限2年以上課程の専修学校卒業者
→ 保育士と関係ない学部でも受験資格があります。 - 平成3年3月31日以前卒業の高卒者
→ 受験資格があります。
また、中卒者や平成3年以降の高卒者でも児童保護業務での勤務経験があれば受験資格が与えられます。
詳しくは、全国保育士養成協議会のホームページからご確認ください。
受験科目
保育士試験の受験科目は非常に多くなっています。
試験は2部制で、1次試験の筆記試験に合格した人だけが2次の実技試験に進めます。
1次筆記試験の科目は、全9科目です。
- 保育の心理学
- 保育原理
- 児童家庭福祉
- 社会福祉
- 教育原理
- 社会的養護
- 子どもの保健
- 子どもの食と栄養
- 保育実習理論
試験はマークシートの選択問題で、6割以上の正解で合格できます。9科目のうち1教科でも落とすと不合格になります。
※ただし、1度合格した科目は3年間有効という特別な制度があるので、9科目を3年に分散して合格を狙う人もいます。
2次試験は保育実技となり、音楽・造形・言語の3分野から2分野を自分で選ぶことになります。楽器の演奏経験がない人は自然と造形・言語を選ぶことになるでしょう。
例年、音楽は指定楽譜による楽器演奏(ピアノ・アコーディオン・ギターから選択)、造形は出題テーマをもとにした絵画表現、言語は時間制限内の素話です。
保育士試験のメリット
保育士試験のメリットは、以前は保育に全く関心がなく別の学部を卒業した社会人でも、受験資格がある点です。また、保育士試験の受験料は13,000円ほど。通信講座等受験勉強のための費用を足しても、保育系の学校に新たに通うより格段に安くなります。また、最短半年程度で資格を得ることができるため、養成施設に通うより資格取得までの期間を短くすることができます。
保育士試験のデメリット
保育士試験は合格率が低く、毎年10%~20%台です。年々合格率は高まる傾向にありますが、どれだけ受験勉強を頑張っても必ず合格できるとは限りません。下手をすれば、養成施設に通うよりも時間がかかってしまうこともあるでしょう。確実に保育士資格を取得したいなら、格安で通える通信制の保育士養成施設に入学することをお勧めします。
保育士試験の勉強方法
お勧めは通信講座の利用
保育士試験の勉強方法は基本的に3つあります。
- 独学
- 通信講座の利用
- 対策塾に通学する
保育士試験対策塾は関東など首都圏に多く、そもそも通学圏内にいない人は選択肢から外さなければなりません。また、受講費用もかなり高額です。そのため多くの人にとっては「独学」か「通信講座」かの2択になります。
お勧めは通信講座を利用することです。通信講座は価格がリーズナブルで、どの地方にいても受講ができ、種類もかなり豊富です。
保育士試験は法改正について出題されることもあるため、独学だけでは対応が難しいですが、通信講座を受講していれば最新情報をカバーすることができます。また、実技試験対策では自分の作品や演奏を添削してくれる通信講座の先生が心強い助けになります。
良い通信講座の選び方とは
保育士試験の通信講座は非常に種類が豊富です。おおむね、オリジナル教材と講義のDVDがセットになっています。
通信講座によって、「この科目には強く、この科目にはイマイチ」というカバー範囲の差が出てきますが、すべての科目の出題範囲を100%勉強できる講座はないといっていいでしょう。そのぐらい保育士試験で出題される範囲は広いです。完璧な講座を探すより、足りないと感じた部分は自分で参考書や問題集を買って対策した方が良いです。
それではどんな通信講座を選んだらよいかというと、まずは価格です。どの講座もさして変わらないと考えるなら、もちろん安い方が良いでしょう。
次に、合格サポート制度。保育士試験は難しいので1発で合格できない人の為に、多くの講座では受講延長制度を設けています。合格サポートのための期間が長いものを選びましょう。
最近ではDVDだけでなく、オンラインで視聴できるe-learningシステムを取り入れているところも増えています。隙間時間にどこででも勉強したいという人は、オンラインで動画視聴ができる講座を選ぶといいですね。
また、保育士資格を取得してすぐに働きたいと考えている人は、資格取得後のキャリアサポートをしてくれる通信講座が役に立つでしょう。
筆記試験対策9割 実技試験対策1割
では、実際の保育士試験の勉強方法を紹介します。とりあえず1次試験に受からないことには先に進めませんので、受験準備開始と同時に「筆記試験対策だけ」を行うようにします。
というのも、筆記試験から実技試験までの期間は2か月程度空くので、その期間中に実技試験対策をしても十分間に合うからです。実技試験は何かをインプットする試験ではなく、今持っているものを上手にアウトプットする試験なので、対策にさほど時間をかけなくて済むのです。
また、筆記試験で一度合格した科目は3年間合格扱いになるので、仮に2次試験に1度落ちたとしても、実技においては2年間挑戦のチャンスが残っていることになります。
学習時間の配分としては、筆記試験対策9割、実技試験対策1割の気持ちで臨みましょう。
科目の概要をインプットしたら、後はアウトプットしながらの暗記
まずは、通信講座から届いた9科目の教科書、DVD講義を流し読み、流し見して全体の概要を把握します。この時点では暗記の必要はありません。どの科目で、どんなことを学ぶかだけを見ればよいのです。
次に、各教科からどの部分を暗記すればよいのかを考えます。暗記部分を探すのに最も役に立つのは保育士試験の一問一答問題集です。
一問一答は筆記全科目の暗記必須事項がコンパクトにまとまっている上、答えをすぐに確認できますから、幅広い範囲の暗記にとても効果的です。新書サイズでコンパクト、どこでも持っていけるのでいつでも傍に置いて知識の確認をするようにしましょう。
ユーキャン・成美堂出版・翔泳社からそれぞれ出ていますが、どの本もカバーしている範囲が違います。最初に1冊仕上げたら、2冊目、3冊目の暗記に挑んでみましょう。
一問一答をやり始めると、「この部分はもっと深く理解したい」と思う部分が出てきます。そんなときは、最初に流し読みした参考書に戻り、知識を深めます。参考書で分からない時は、通信講座の質問サポートを利用したり、別の参考書を買ってきて勉強するようにします。
また、「重要人物の名前」「年表」など、複数の科目にわたって出題されるものは、1冊のノートに表形式で書き出して暗記するようにすると効率が良いです。
過去問は必須。予想問題集もガンガン解いていこう
一問一答である程度暗記事項が身についたと感じたら、できるだけ早く過去問に取り組みましょう。9科目の過去問を数年分解くのには時間がかかりますが、保育士試験の傾向を学ぶためには過去問に取り組むことは必須です。1度だけでなく2度3度と解いて、解説も頭に入れるためには試験2~3か月前には過去問を解き始めたいものです。
過去問で間違えた問題は、一問一答がカバーしていなかった別の知識が必要だということです。いつでも見直せるように解説をノートに写したり、一問一答の余白に書き足したりしておきます。
また、試験の1~2か月前には各社が出版している予想問題を解いてみてください。今までに勉強した知識が定着しているか、抜けているところはないか再確認できます。出版社によってかなり問題に差があるので、幅広く知識を身に着けるのにうってつけです。
3年計画もあり
もし、試験までの学習時間が不十分だと感じたら、数科目を捨ててしまうのもアリです。繰り返しになりますが、保育士試験の筆記科目は一度合格すれば、3年間は再受験する必要がありません。そのため、難しい科目を早々に捨てて、1年目に簡単な〇科目を確実にとり、2~3年目に難しい×科目合格を目指すというのも戦略的に間違ってはいません。
実技試験対策はプロに頼ろう
無事、筆記試験を突破した後は実技試験対策です。実技試験は筆記試験に比べて、「何が正解で何が間違っているのか」合格基準が非常にあいまいです。たとえば、造形の絵画制作ですが、自分の描いた絵が合格基準に達しているのか、一人では全く判断できません。ただイラストがうまいだけで合格できるわけではなく、逆に、一般的に言えば下手な絵だから不合格というわけでもないのです。
こういうときは、通信講座の添削者、プロにお任せするのが一番です。メールや音声を送ることで、どの点に注意して実技試験に臨んだらよいのか的確にアドバイスしてくれます。アドバイスを生かした作品ができるまで、時間いっぱい頑張ってください。
保育士試験の受験勉強に大切なのはモチベーション維持
以上、保育士試験の勉強方法を紹介しました。
保育士試験は合格率が低い難関試験だといわれますが、その原因の一つは試験科目の膨大さです。
受験日までに集中力を切らさず、試験対策に打ち込めるかどうかが合否を分けます。
保育士として働く明るい未来を想像しながら、モチベーションを維持するようにしましょう。
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