自分をアップデートする土壌を作る、2種類の睡眠と記憶に対する役割

睡眠

学生時代、前日に徹夜で詰め込んで試験に臨んだ経験がある人も多いと思います。

やってもなかなか覚えられない、そのため不安なのでできるまで繰り返してしまう。
その気持ち、よく分かります。
しかし、そこでもう一頑張りをしてしまうと、かえって試験の出来が悪くなってしまうことがあるのです。

この時に取るべき最も効果的な行動は、実はぐっすり眠ることなんです。
聞いたことがある方もいるかもしれませんが、記憶と睡眠は密接に関係しています。

当記事では勉強したことを忘れずに自分のものにするために知っておくべきこと、
記憶の特性、脳の働き、睡眠の必要性について書いていきます。

睡眠の前提知識

人によって多少の差はありますが、1日7〜8時間眠るとすると、人生の約1/3は眠っているという計算になります。
それほど多くの時間をかけて体の中では何が行われているのでしょうか?

決して、活動できずに失われた時間でも、疲れた体を休憩させているだけでもありません。

睡眠中に体は重要な機能のバランスをとって体調を調整しています。
呼吸・免疫・循環機能であったり、成長に関することまで整えています。

また睡眠中は体中の血液の約20%が脳内へと流れ込み、記憶の整理や再構成が盛んに行われます。

お酒で記憶がなくなるのも……

「お酒を飲みすぎて昨日の記憶がない」なんていうのはよく聞く話ですが、これも睡眠中の記憶定着が正常に行われないせいです。

アルコールの作用によって脳の働きが抑制されてしまい、大脳皮質に記憶が保存されなくなってしまうのです。

逆に言えば、アルコールを飲まないで脳の働きが正常であれば、この睡眠中に記憶が定着するわけですから、しっかり睡眠を取っていないと、いつもお酒を飲みすぎてしまった時のように、記憶を正しく保管することができず、長期的な記憶はできないということになってしまいます。

記憶ももちろんですが体調面なども含めて、毎日良質な睡眠をとることで最新版にアップデートされた状態で1日に臨むことができますから、それだけ睡眠は人間にとって重要なことだということが分かります。

忘却曲線とは?

ちゃんと睡眠を取っていたとしても、勉強したけど覚えているものと覚えていないものがありますよね?

人間は覚えたと思っていても、時間の経過に伴いどんどん忘れていってしまいます。

人間が勉強してから忘れる量とスピードを19世紀の心理学者、ヘルマン・エビングハウスが研究したものが、有名な忘却曲線というグラフです。

忘却曲線

人間は勉強してから20分後、なんと40%もの記憶を忘れてしまっており、1日経過すると66%も忘れているそうです。

勉強してすぐの段階では短期記憶として、一時的に記憶されているだけという事になります。この忘却は、記憶を長期記憶として固定することで防ぐことが出来ます。

そのため、この忘却曲線を参考に復習などを行い、短期記憶から、忘れない長期記憶にしていくことが非常に重要になります。

このように脳は非常に忘れやすいという特性を理解して、復習や睡眠を行い、忘れないよう手助けをしていくという事が非常に重要なのが分かります。

睡眠の記憶に対する役割

では、睡眠は記憶に対してどのような役割を果たしているのでしょうか。

まず、睡眠は大きく分けると2つの段階からできています。
レム睡眠と、ノンレム睡眠です。

この、レム/ノンレム睡眠の段階により、異なる種類の記憶形成がなされていることも分かっています。

ノンレム睡眠

ノンレム睡眠の際に脳波を測定したところ、脳幹から海馬、視床、皮質へ電気刺激が伝達されることが観測され、これらが記憶形成の中継地点として働いていることが分かりました。

このノンレム睡眠中に、「メモリーリプレイ」と呼ばれる現象が見られており、これが記憶の想起に対応し、またその際に新しい記憶に対応するニューロン群が何度も再活性化する様子が見られます。このことが長期記憶の固定化に重要な役割を果たすと考えられています。

レム睡眠

一方で、レム睡眠中のメモリーリプレイについては報告・研究が少なく、まだ検証が必要なようです。

しかし、近年の研究でレム睡眠中のみマウスの脳の働きを邪魔した結果、記憶の形成や定着がほぼ完全にできなくなる、ということが分かっています。つまり、レム睡眠もまた記憶の定着に重要な役割を果たしているのです。

また、レム睡眠は脳の状態が活動時と非常に似ているため、手続き記憶の形成と強く結びついているようです。

それぞれの役割の違い

このことから、例えば楽器または運動の練習をしても、レム睡眠に達していなければ体が覚えられないため効果がなく、そしてノンレム睡眠中でもより深い睡眠、徐波睡眠に到達できなければ、勉強しても記憶が強固にならないことが分かっています。

また研究では、勉強などの陳述記憶は覚えてから3時間後楽器・運動などの手続き記憶は覚えてから1時間後に眠るのが効果的と言われています。

まとめ

これらの研究から、睡眠が記憶・勉強と非常に強く結びついていることが明らかになったと思います。

勉強する内容、勉強する量、復習のタイミング、勉強してから寝るタイミング、睡眠時間、全てを自分の思うとおりに活用できれば、毎日新しい学びを自分のものにし、毎日アップデートした自分で過ごせるのではないでしょうか?

勉強して、自分をアップデートしたい!と思った方、何が必要かもちろん分かりますよね?
スマートフォンには充電が必要ですが、それが人間にとっては睡眠になります。

良質な睡眠を毎日取ることは、毎日自分をアップデートする準備になります。
しっかり寝て、しっかり学び、毎日着実に成長していきましょう。

(参考)
J-STAGE | メモリーリプレイと記憶の固定化
Sense and Sensation | Retrieval: Getting and Forgetting
太陽笑顔fufufu | 「覚えられない」は年齢のせいじゃない!記憶力の真実

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