中高生に勉強の悩みに関するアンケートを取ったところ「食後は眠くて、勉強に集中できない」「食後はダルいから、朝食を食べずに授業を受ける」という回答がみられました。
このように食後の眠気やダルさに悩んでいる方は少なくないようです。
勉強中に眠くなってしまうと困ってしまいますが、かといって食事せずに勉強すると集中力が長続きせず結果的に勉強効率は悪くなりがち。
「眠くなるから、夕食後に勉強するなら少しだけ」というスタイルの方もいると思いますが、入試前や資格試験直前は勉強時間を少しでも長く確保したいですよね。
実は、食事で脳のエネルギー源であるブドウ糖を摂取できるので、眠気やダルさがなければ食後は勉強するのにうってつけの時間。
そして食後の眠気やダルさは、食事のタイミングや食事内容などを変えることで軽減されることが分かっています。
今回は「血糖値」や「消化の負担」に着目して、勉強効率を高める食事のタイミングやオススメのメニューをご紹介していきます。
血糖値とは?
「糖質制限ダイエット」がメジャーになり、ファッション雑誌でも「血糖値のコントロール」が取り上げられるなど、以前より血糖値のことを知る機会が増えましたね。
コンビニで低糖質食が簡単に手に入りますし、低糖質メニューのレシピ本も色々出版されています。
低糖質食は「血糖値の上昇を抑える」ことが出来ますが、そもそも「血糖値上昇」はどのような影響を身体に与えるのかご存知ですか?
まずは、血糖値に関して説明していきます。
「血糖値」は血液中に流れるブドウ糖(血糖と呼ばれます)の量を表していて、「血糖値が上昇」=「血液中のブドウ糖の量が増加」しているということです。
これを聞いて以下のような疑問が出てくるかもしれません。
脳のエネルギーはブドウ糖だから血糖値が上昇している方が勉強効率が上がるのかな?
ケーキやポテチを食べて血糖値を上昇させれば頭の回転が速くなる?
残念ながら「甘い物や炭水化物を食べる→血糖値が上昇→脳にもブドウ糖がたくさん運ばれる→脳の働きが活発に」というシンプルな仕組みにはなっていません。
学生時代の私は「勉強効率を上げるためにスイーツ!」と甘い物を勉強の合間によく食べていましたが、実は間違いだったのを最近知りました(苦笑)。
では、ブドウ糖が吸収され血糖値が上昇すると、体内でどのような変化が表れるのか詳しく見ていきましょう。
血糖値が上昇すると?
炭水化物には人間が消化できる「糖質」とほとんど消化できない「食物繊維」があります。
「糖質」は、消化吸収が速く血糖値を急激に上げる「単糖類・二糖類(糖類と呼ばれる)」と、消化吸収に時間がかかる「多糖類」に分類されます。
糖類は甘みが強いブドウ糖や果糖、砂糖などで、白米などに含まれるデンプンは多糖類に含まれます。
これらの糖質は唾液や膵液に含まれる消化酵素によりブドウ糖などに分解され、小腸で吸収、そして血液中に流れていきます。
こうして血糖値が上昇すると「インスリン」というホルモンが、膵臓のランゲルハンス島と呼ばれる細胞群から分泌されます。
インスリンの働きにより、全身の細胞でブドウ糖を取り込めるようになり、そしてようやくブドウ糖をエネルギーとして利用したり貯蔵したりできるようになります。
つまり、食後に血糖が増加してもインスリンの働きによって一定量まで減少するということです。
しかし、急激に血糖が増加するとインスリンが大量に分泌され、食事前より血糖値が低くなってしまい、「低血糖」と呼ばれる状態になってしまいます。
低血糖状態だと脳にブドウ糖が効率よく供給できず、その結果として眠気やダルさ・イライラなどの症状が引き起こされます。
食後に勉強に集中できない原因に、「この「血糖値の急降下」が大きく関係しているのです。
血糖値の急降下を防ごう
脳を働かせるためにはエネルギー源のブドウ糖を摂取することが重要です。
でも、血糖値が上昇するとインスリンが分泌されて、血液中のブドウ糖が少なくなりますよね。
大切なのはインスリンを必要以上に分泌させないように、食事内容や食事のタイミングを気をつけること。
インスリンの分泌量が適正であれば、食事前より血糖値が下がることを防げて、脳にブドウ糖を安定して供給できるからです。
食事内容
血糖値を急上昇させるのは、砂糖たっぷりのスイーツや糖質中心の食事です。
簡単にランチを済ませるために、パスタやラーメン、コンビニのパンやおにぎりを選ぶという方も多いのではないでしょうか。
しかし、糖質を単体で摂るとブドウ糖に分解されるのも早く、短時間で吸収されてしまいます。
ですので、「ベジファースト」という食べ方を心がけてるといいでしょう。
野菜料理を食事の最初に食べることを「ベジファースト」といいます。
パスタにサラダをセット、ラーメンに野菜をトッピング、おにぎりに味噌汁をプラスして、野菜から食べればオーケーです。
野菜に含まれる食物繊維が糖質の消化や吸収の邪魔をするので、血糖がゆっくり穏やかに増加していきます。
そうすると安定して脳にブドウ糖が供給できるので、集中力が長続きして勉強効率向上に繋がるというワケです。
また、ブドウ糖供給の問題以外にも、血糖値が急激に下がると「アドレナリン」「ノルアドレナリン」などの血糖値を上げる働きのあるホルモンが過剰に分泌されます。
「アドレナリン」「ノルアドレナリン」は集中や覚醒に関わるホルモンですが、過剰に分泌されるとイライラや不安感などのメンタルの不調を引き起こすことも。
メンタルの不調は勉強に悪影響を与えますので、血糖値の変動を小さくしてメンタルを安定させていきましょう。
食事のタイミング:間食のすゝめ
血糖値は食後すぐに上昇し始め、食後2時間程すると食事前と同じくらいになります。
しかし、空腹時間が長く血糖値が低い状態が続くと、次の食事の時に「血糖値が急上昇 → インスリンが過剰に分泌 → 血糖値が急降下」という状態を引き起こします。
なので、食後3時間くらい経ったら間食をして血糖値が下がりすぎないようにしておくのがベスト。
昼食が正午なら午後3時くらいに間食するといいですね。
そのため「午後3時はおやつの時間」というのは、血糖値コントロールの面からも理にかなっていると言えます。
とはいえ、血糖値を急上昇させるスイーツやポテトチップスなどは間食に不向きなので注意。ナッツや無糖のヨーグルト、カカオ70%以上のビターチョコなどは栄養価も高く、間食にオススメです。
勉強で疲れると甘い物が欲しくなる方は、2週間ほどお菓子断ちしてみましょう。血糖値が安定している時間が増え、結果として集中力が長続きするようになります。
習慣を変えるのはとても大変ですが、できることから始めてみてはいかがでしょうか。
タイミングだけでなく食べ方を見直そう
食事のタイミングだけでなく「食べ方」も見直していきましょう。
血糖値の変動を小さくする食べ方は以下の通りです。
- 満腹になるまで食べず、腹七分目を心がける
- 早食いは避け、ゆっくり食事をする
- しっかり噛む
- 食べる順番を「野菜 → タンパク質 → 炭水化物」にする
満腹になるまで食べると、糖質量が増えて血糖値の上がり幅が大きくなってしまいます。
また、早食いやあまり噛まずに食べると満腹感が伝わりにくいですし、一度に大量の糖質を摂取してしまい、血糖値が急上昇してしまいます。
ゆっくり食べるとブドウ糖への分解も段階的に行われ、吸収も緩やかになります。
また、コース料理のように「野菜 → タンパク質 → 炭水化物」の順番で一品ずつ食べていくと、食物繊維やタンパク質、脂質が糖質の分解や吸収の邪魔をしてくれますので、血糖値の上昇をゆっくりにすることが可能になります。
消化の負担を減らす
血糖値を急上昇させない食事は消化の負担が大きいというデメリットがあります。
食後すぐにダルいと感じる原因の一つに、消化器系の働きが活発になる代わりに他の臓器の働きがゆっくりになることが関係しているようです。
これらの臓器の働きを調整している自律神経は、昼間や活動時に優位になる「交感神経」と夜間やリラックスしている時に優位になる「副交感神経」から成り立っています。
交感神経優位 | 副交感神経優位 | |
唾液などの消化液 | 分泌が減少 | 分泌が増加 |
胃腸の運動 | 運動が減る | よく動く |
排泄 | 抑制 | 促進 |
脳や神経 | 興奮 | 鎮静 |
食後は消化を促進するために副交感神経が優位になり、脳の働きがゆっくりになります。
消化の負担が大きいと副交感神経が優位になる時間も長くなり、勉強効率が上がりにくいです。
何もしなくても副交感神経が優位になりやすい夜間は、特に消化の影響を受けやすいということです。
夜に勉強をする時は、夕食のメニューや食べ方に気をつけて消化の負担を減らすといいでしょう。熱を加えた野菜や玉子、脂肪分が少ない肉類は消化がスムーズで勉強前の夕食にオススメです。
脂質は消化の負担が大きいので、夕食時に取りすぎないように。
また「しっかり噛んで食べる」「腹七分目」を意識すると、多少こってりした夕食でも消化の負担が軽減されます。
「腹八分目に医者いらず」「腹も身の内」などの昔からの戒めは現代でも有効ということですね。
まとめ
勉強の効率を高めるためには、食事のタイミングやメニュー、食べ方に気をつけるのが大切だということが分かりました。
- 血糖値を急上昇させるとインスリンが過剰に分泌され、低血糖状態になる
- 血糖値に変動を小さくすると集中力が長続きする
- 食後3時間くらい経ったら、間食をすると血糖値が安定しやすい
- 夜に勉強する時は、消化の負担が少ない夕食にする
脳のエネルギーであるブドウ糖の量をコントロールして、効率よく勉強できる時間を伸ばしていきましょう!
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