忘却曲線の理論から考える 効果的な記憶方法と勉強術

記憶のメカニズム

エビングハウスの「忘却曲線」という言葉をご存知の方は多くいらっしゃると思います。なんとなく「人間が記憶を忘れていく過程を図にしたもの」という理解をされている方が多いように思います。

しかし、それがどのような実験で提唱されたのか、という深い理屈までご存知の方は少なく思います。実はこの忘却曲線について理解することで、勉強の効率がぐんと上がり、記憶の定着に苦労しなくなります。

現在暗記や勉強に取り組んでいる方はぜひ最後までご覧ください。

記憶を忘れてしまうのはなぜか

人間の記憶には短期記憶と長期記憶と呼ばれる二つの貯蔵庫があります。私達が普段「記憶」と呼んでいる情報達は長期記憶の中に格納されていて、重要でないものはどんどん忘れ去られていくのです。

何でもかんでも記憶を保持したままでは、いざという時に取り出したい記憶を取り出せず、知的な作業の効率が悪くなってしまいます。評論家の外山滋比古さんの著書に『思考の整理学』がありますが、その中でも同様の主張が展開されています。

記憶を材料に、創作を料理に例え、調理場に使わない食材が散乱しているようでは作りたい料理が上手く作れなくなる、という趣旨です。

脳はこうした「無駄な材料」を極力減らすために、積極的に記憶を忘却していきます。この忘却について研究した心理学者が、ドイツの心理学者エビングハウスです。

エビングハウスの実験によって「思い出す過程」が可視化された

エビングハウスは「忘却」に焦点を当て、無意味綴りと呼ばれる実験を行いました。

例えば被験者にスイカという言葉を覚えてもらい、その方がそれを忘れた後でまた覚えてもらうとして、その方がスイカ農家であればかなり有利になってしまいます。普段から馴染みのある言葉だからです。

しかし、あくまで人間の平均的なデータを取得することに意味があるので、エビングハウスは「無意味な言葉」をたくさん用意し、それを被験者に覚えさせて、忘れた頃に再び覚えさせる、という実験を繰り返し行いました。

このようにしてエビングハウスは、ある記憶が失われた後で、また思い出される過程を可視化できる初めての実験を行いました。人間の記憶が一度定着し、記憶が失われた後にまた思い出されるために必要な「復習」の回数と時間の関係性をグラフにしたのが、かの有名な忘却曲線です。

エビングハウスはこの実験から、人間に記憶を定着させる上で重要になる復習の「タイミング」を可視化しました。これは大きな功績として、現代の心理学の教科書にも載って語り継がれています。

参考:Retrieval: Getting and Forgetting (Part8 of 14)

意味記憶を定着させるためには

忘却曲線を読み解くと、学習から24時間が経過すると記憶は半分以上失われてしまうことが分かっています。ただ、注意してほしい点として、これは「無意味綴り」による記憶の減少度合いを示しています。

多くのメディアでは無意味綴りのデータをそのまま流用して24時間後に記憶が半分以上失われてしまう、と示唆していますがそれは誤りです。意味のある単語、多少興味のある内容を勉強している場合は、記憶の定着率はもう少し高まると予想できるからです。

しかし、現実に即した忘却曲線を描くのは非常に難しいことです。

どれくらいのスパンで復習すればよいのか

そこでおすすめしたいのが、リリースされているアプリやサービスを利用することです。筆者も英単語を勉強するために「復習スパンを自動的に調整してくれる」アプリを利用したことがあります。

確かに「あぁ、この意味は何だったっけな」と、ちょうど忘れかけているタイミングで出題してくれるアプリが多くありました。現実的に、記憶する量が増えれば毎日復習するのは不可能です。リマインダーで管理するのも手間になりますので、暗記に際してアプリの力を借りるのは1つの選択肢として検討してもよいでしょう。

アプリの中にはユーザーの学習記録を人工知能に覚えさせ、ユーザーの忘却曲線を算出し、その忘却曲線を基にユーザーが前回の学習内容を忘れそうなタイミングでリマインドの通知を行い、ユーザーに復習を促すものがリリースされています。

復習の計画を立てるのは時間と手間がかかりますので、自動化できる部分はどんどん自動化して効率アップを図りましょう。

或いは、こちらの記事でご紹介している「間隔反復」というテクニックも有効ですので、こちらもご参照ください。

一日経ったら三分の二も忘れている?復習の最適なタイミングを示す「間隔反復」とは?

忘却曲線を逆手に取って記憶を自在に操ろう

記憶は何もしなければどんどん忘却されていきます。しかし闇雲に毎日復習すればよいというわけではありません。

10個程度の英単語であれば比較的簡単に覚えられるでしょうが、例えば大学受験では2000個以上の単語を覚えなくてはなりません。更に、こうした大量の暗記が必要になる場面は、社会人になるとかなり増えてきます。

時間の捻出が難しい社会人こそ効率的にサクッと暗記ができるように、勉強法を勉強することや記憶に関して勉強することが重要だと言えるでしょう。

記憶に関するその他の記事は、こちらからもご覧いただけます。

覚えたことは忘れない!長期間記憶できる勉強法

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