高校数学Aの「場合の数」は、2次関数や三角比などの数学問題と違い、計算能力があるからといって点数が取れる分野ではありません。また他の分野に比して公式が非常に少なく、その公式(PやC)ですらどこに使ってよいのかサッパリわからない人が続出するという大変厄介な存在です。そんな「場合の数」の攻め方は、「綿密な書き出し」と「パターン分析」。それでは具体的に「場合の数」の攻略法についてみていきましょう。
目次
「場合の数」はすべてのパターンを書き出すのが基本
一番確実な「場合の数」の方法は、すべてのパターンを書き出すことです。
例えば、「7(ABCDEFG)人の人を3人選んで1列に並べる方法は何通りあるか」という問題。
これは最初の先頭の人をABCDEFGと書き並べて、Aの後の2番目にはAを除いたBCDEFGの6人を書き、さらにBの後ろにはABを除いたCDEFGの5人を書き…と順番にやっていく。つまり中学までに習った樹形図を書けば、時間はかかるけれど答えにたどり着けます。
ただし例題のようなパターンの場合、先頭がAであれ、Bであれ、その次にくる枝の数は一緒なので、
最初に選ぶ人7パターンそれぞれに、2番目に並ぶ人6パターンがあり、その6パターンそれぞれに3番目に並ぶ人5パターンがある。
つまり
\(7×6×5=210通り\)
と計算で導き出せるというわけです。210通りに及ぶ樹形図を描くのは大変だから、計算で省略する方法を学ぶのです。
ただし、この計算の元には樹形図という「書き出し」があることはイメージとして覚えておいてほしいです。また、ややこしい問題が出た場合は、とりあえず「書き出し」を行ってみてから、「どこかを計算で省略できないか」を考えてください。
公式PとCはただ式を略しただけ!
「場合の数」の公式といえば、PとCです。Pは順列に、Cは組み合わせに使う…というのが教科書的な説明になりますが、問題を読んだだけでは順列を使うのか、組み合わせを使うのか、判別できない問題がザラにあります。
問題を読んだとき「これは順列だからPを使うのかな?それともCを使う組み合わせかな?」と考えるのはあまり得策ではありません。基本的な問題ならそれで解けることもありますが、応用問題では歯が立ちません。まず「書き出し」のイメージを持って、その中でPやCが使えないかを考えるのです。
またP=順列と覚えるのではなく、具体的な式で覚えてください。
\(nPr = n ×(n-1) ×…(n-r+1)\) → nから1個ずつ数を減らしたものをr個分掛けていく場合の省略記号です。
※特に、\(nPn=n×(n-1)×…×1\)を\(n!\)と書きます。
例:\({}_7{P}_3=7×6×5\)
これは「7人の人を3人選んで1列に並べる方法」を表した前の例題の回答と同じ式ですね。Pは樹形図の式を省略する記号だったわけです。もしPという記号を知らなくても、樹形図の考え方さえ知っていれば例題は解けます。ただ、7×6×5をより短く表現するときにPを使うと便利…という程度の公式だと考えてください。
また、C=組み合わせと覚えるのではなく、
\(nCr={n×(n-1)×…(n-r+1)}÷{r×(r-1)×…×1}\)
\(=nPr÷{r×(r-1)×…×1}\)
であることを暗記しましょう。
例:\({}_7{C}_3=(7×6×5)÷(3×2×1)\)
この式は7人から3人選んで1列に並べたのち、3人の順序はどうでもよいとする場合の数です。ABCもACBも、BACもBCAも、CABもCBAも、計6パターンを同一視します。この6パターンを\(3×2×1\)という表現で表しているのです。
全体の\(7×6×5(=nPr)\)を同一視する\(3×2×1\)で割っているのですね。
この式を省略して\({}_7{C}_3\)と書いているだけです。
「区別があるのか」「区別がないのか」が最大のキーポイント
基本的に「書き出し」が重要な「場合の数」ですが、注意点があります。
それは、
- 並べるもの、分けるものに「区別がある」のか「区別がない」のか
- 分けるところに「区別がある」のか「区別がない」のか
ということです。
この違いによって「書き出し」の作法が異なるからです。例えば、樹形図は「区別のあるもの」を「区別のあるところ」に分ける書き出し方です。Pを使って式が書けるパターンとも言えます。
区別のあるなしをもとにすれば、「場合の数」は基本的に4パターンに分けられます。4パターンを押さえると、「場合の数」の攻略はぐっと楽になります。
具体的な問題例
「区別があるもの」を「区別があるところ」へ分ける問題
例題:7(ABCDEFG)人の人を3人選んで1列に並べる方法は何通りあるか。
1列に並べるということは1番目、2番目、3番目という区別があることです。最初にやった例題ですね。樹形図を使って書き並べることができますが、計算を使えばより簡単に\(7×6×5={}_7{P}_3=210\)通りと回答することができます。
もう一問。
例題:6(a,b,c,d,e,f)人の生徒をA,B,Cの3組に2人ずつ分ける方法は何通りあるか。
※基本的に「場合の数」では人間は区別することになっています。
「区別のあるもの」を「区別のあるところ」に分ける樹形図のやり方を使うと、6人のうちから2人を選び、残りの4人のうちから2人選び…と枝分かれさせていくことができそうです。ただ6人から2人選ぶ場合、abと選んでもbaと選んでも同じですから、2人を選んだ時点でダブりで数える回数\(2×1\)で割り算をします。つまり最初の2人を選ぶ方法は\((6×5)÷(2×1)\)です。簡単に書くと\({}_6{C}_2\)ですね。次に4人から2人を選ぶので\((4×3)÷(2×1)={}_4{C}_2\)、最後に2人から2人を選ぶので\((2×1)÷(2×1)={}_2{C}_2\)
\({}_6{C}_2×{}_4{C}_2×{}_2{C}_2=90通り\)
どうして上の式が掛け算でつながるのかわからない人は、途中まで樹形図を書いてみてください。
「区別があるもの」を「区別がないところ」へ分ける問題
例題:6(a,b,c,d,e,f)人の生徒を3組に2人ずつ分ける方法は何通りあるか。
先程の「区別があるもの」を「区別があるところ」へ分ける問題で出てきた例題と似ていますが、今回は組に名前がありません。組に名前がある場合は、\({}_6{C}_2×{}_4{C}_2×{}_2{C}_2=90通り\)と解けたのですが、組の名前がなくなればA組(a,b)もB組(a,b)も同じこと。つまり90通りの中にダブりが含まれていることになります。
ではダブりの数は?
例えば(a,b)、(c,d)、(e,f)というクラス分けは、先頭からA組、B組、C組と並べていくと何通りあるでしょう。これは、実は「区別があるもの」を「区別があるところ」へ分ける問題と同じ考え方で解けます。区別のあるものを1列に並べていくのだから、\(3×2×1={}_3{P}_3=3!=6通り\)です。
\({}_6{C}_2×{}_4{C}_2×{}_2{C}_2=90通り\)というのは、本来区別のないはずのものを6回ダブって数え上げている状態です。
だから90通りを6で割ってあげればいいのです。
綺麗に式を書くなら\(({}_6{C}_2×{}_4{C}_2×{}_2{C}_2)÷3!=15通り\)となります。
「区別がないもの」を「区別があるところ」へ分ける問題
例題:6個の区別のつかないきび団子をさる,とり,いぬの3匹に分ける方法は何通りあるか。
これは「重複組み合わせ」と呼ばれる問題です。ちょっと特殊な考え方をします。まず、さる,とり,いぬの3匹を区切るための2本の棒|を用意します。さる|とり|いぬと陣地分けをし、ここに6個のきび団子〇を分けていきます。たとえば〇|〇〇〇|〇〇と並んだら、さるが1個、とりが3個、いぬが2個取った場合を表しているのです。このように、〇と|の並べ方が何通りあるかを考えていきます。
〇6個は区別がつきませんし、|2本も区別がつきません。でも、いきなり区別がないものの並べ方を考えるのは難しいので、まず、〇にも|にも区別があるとして、並べ方を考えます。すると、問題は「区別があるもの」を「区別があるところ」へ分ける問題に変わりますから、
\({}_8{P}_8=8!通り\)
しかし、これはもちろんダブりを含んだ数です。〇6個に区別があるとした場合の並び方は6!通り。また、|2本に区別があるとした場合の並び方も2!通りあります。〇の6!通りそれぞれに、|の2!通りの並び方がくっついてきます(樹形図の考え方を思い出してください)。だから、ダブって数えた回数は\(6!×2!回\)です。
よって答えは、\(8!÷(6!×2!)=28通り\)
「区別がないもの」を「区別がないところ」へ分ける問題
例題:区別のつかない3個のアメを2つの区別のつかない箱2つに入れる方法は何通りあるか。
最後の「区別がないもの」を「区別がないところ」へ分ける場合の書き出し方は{}で数えていく方法です。機械的な掛け算ではなかなか正解できないので、地道に数えていくことになります。
例題の場合は{3,0}{2,1} の二通りになります。{1,2}は{2,1}と同じになるので書き出してはいけません。このパターンのポイントは、「大きい数から書いていく」とルールを決めること。このルールに従えば{1,2}は小さい数からスタートしているので×と判定することができます。
書き出し+パターン分けで解答方法を身に着けよう
「場合の数」の問題を見たときは、まず、「区別のつくもの」を扱っているのかどうかに注目しましょう。4つのパターンのどれかに当てはまれば、解答方法は見えてきます。また、中にはどれに当てはまるのかよく分からない問題もありますが、そんな時はとりあえず樹形図や{}を使って思いつくパターンを書き出してみましょう。手を動かしているうちに、解き方が分かることがあるのが「場合の数」の面白さです。
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